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>そうそう、今朝方ついに蜘蛛回避に成功致しました…!!いえ、すみません。私が何をしたわけでもなく、駆けつけてくれた知人に倒してもらっただけなんですがwアースジェット噴射の際の容赦なさと言ったら頼もしい限りだたww…改めて見ると結構でかくてですね……あんなのと同居したまま私は下のセンチメンタル小室マイケル坂本ダダ先生なんか描いてたのかと思うともうやりきれなくてやりきれなくて・・・・・・。
これで2日ぶりに……眠れるんだぜ…。
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握っていたペンを放り出し、一つ大きく伸びをする。
ラスト5分の1の仕事に要した時間は1時間ほど。
僕の隣、床の上に座って未だ折り鶴と遊んでいる大王が大人しくしてくれていたから、というのもある。
また飽きて泣き出されでもしていたら、とてもじゃないが仕事なんてできやしなかっただろう。一文字だって書けるものか。
この子がこの部屋に来る前に全部署に通達しておいた「冥王の不在」が功を奏した…というのも妙な気もするが、ともかくも職員の気配はまばらだった。
これから数日、いや、もっと長くなるかもしれない。
その間、執務室の真正面に大きく取りつけられた、あの重い重い扉が開くことはないだろう。
自分で言うのもなんだが、大概仕事の虫な僕のこと、少々寂しい気もしないではない。
忙しい日々が続けば鬼であれ人並みに疲れもするし、休みたいとも思う。
仕事が仕事だけに休みなんてほとんどとれやしない。
大王に至っては年休1週間未満なんてざら、むしろ当たり前である。
まぁ……奴は逃げるが。気付いたらすぐ消えてるが。
ついでにセーラー服なんて着てる現場を取り押さえてしまった日には目も当てられない。
…ともかくそれは別にしても、いざまとまった休みがとれたとなると今度はかえって何をしていいのやらわからなくなってしまう。
読もう読もうとして読めていなかった本でも読もうか。それともここぞとばかりに下界の勉強でもしておくか?
……いや、違うか。やるべきことはある。通常業務がなくなるだけで、それは決して続く事務処理のなくなることを意味するわけではない。
それに何をおいてもしなければならないこと。もうお分かりのこととは思うが、そう、この子のお守りを。
まぁしなければならない、というよりは、やらずにはいられない、といった方が正しいけれど。
「ふぅ……大王、お待たせ致しました。今お仕事終わりましたよ。…すみません、退屈してませんでしたか?」
とは言いながら、夢中になって折り鶴と遊んでいる様子からして、そう退屈していたわけでもなさそうだ。
椅子から降り、跪くようにして座り込んだ大王に目線の高さを合わせた。
折り鶴の腹の部分をつまんで、紙飛行機を飛ばすようにふよふよと腕を動かしている。
ぬいぐるみは膝の上、片耳が床に滑り落ちていた。
しゃがんだ僕に気付いた大王はその姿勢で動きを止め、そしてどこかはにかんだような笑顔で、僕の服の裾を掴んできた。
「…、どうしました?」
やや驚きつつも、その手をそっと握ってやる。
すると少しばかり目を見開いた大王は、更にぎゅっと力を込めて、けれど目は逸らす。
……こうなったとき極端に口数の減る大王の思考を、正確に把握するのは難しい。
小さな子供に還っているわけだから、むしろ単に語彙が足りないだけなのか。
そもそもが幼い子供の思考自体が難解だったりするわけだが…。
けれどこうして取って食べちゃいたいほどのかわいらしい仕草に、毎回困り半分、嬉しさ半分なことは否めない。
手の中の低温を小さく撫でてやりながら、机の上をちらりと見やる。
後はこの数十枚の書類を提出…と言っても僕が先ほど出した休業令の下りた今とあっては、該当部署に投函するだけのことだが、そうすればひとまずの手続きは完了する。
継続する事務処理を別にすれば、後は全ての時間を大王につぎ込める。
「……ほったらかしにしてしまってごめんなさい。寂しかったですよね」
言って壊れものにするように優しく抱きしめてやれば、一瞬だけ震えた体は、それでもおずおずとしがみついてきた。
……可愛い。このまま力の限り抱きしめて、いっそ折ってしまいたいほどの衝動に駆られる。
苦労してそれを呑み込んだ僕は、続く言葉を探した。
「…えぇと、どうしましょうか……あ、さっきも聞きましたけど、そろそろお腹減ったりしてませんか?ちょうど頃合ですし、一緒にごはん、食べましょう?」
しがみついてくる大王の背に手をあてて、その返答をゆったり待って。
肩に乗せられた頭が小さく一つ頷いたのを確認してから、僕は彼の両脇に手を差し入れて立たせ、書類を片手に部屋を出た。
しっかりと握ってくる手を引いて、僕にしてみればわずかの、今の大王にしてみればかなりの距離を、大王の部屋へ数分かけてゆったりと戻った。
途中、書類提出のため寄り道。
冥界の中枢に近いこともあり、やはりいつ来ても重苦しい雰囲気に呑まれそうになる。
その堅苦しさやらプレッシャーやらの中核を為す当の本人はと言えば、僕の後ろでその長身を屈めてすっかり縮こまっている。
大王の抱きしめるうさぎのぬいぐるみも、心なしか小さく見える。
うっすらと涙目、握る手にこもる力が、彼の怯えを伝えていた。
あまり長居したい場所でもない。
一通りの手順を踏みつつもそそくさと提出とは名ばかりの投函を済ませ、足早にその場を離れた。
――そうして今。大王の自室の扉を背後に、少々疲れた様子の大王を寝台に座らせ、ほっと一息吐く。
部屋の静寂を静かに乱す秒針。気付けば普段の開廷時刻まで、30分を切っていた。
「さて、と。ご飯もですけど、その前にちょっと髪、結っちゃいましょうか」
僕の記憶が確かなら、前回は大王の長めの後ろ髪が持主の意思の届かないまま、くしゃくしゃに絡まって大変なことになってしまったように思う。
…そういえば食事の度にぱらぱらと落ちてきて苦労したような。そうそう、思い出してきた。
だったら今回はもう始めから結んどいてやろう。
多分この辺りだろう、と検討をつけながら、部屋の隅の戸棚を探る。
そこは昨晩、僕がかき回してぐちゃぐちゃにしたままになっていた。
…僕が手を出す前からぐちゃぐちゃだったなんてことは置いといて。すると、今度は拍子抜けするほどにあっけなく見つかった。
――黒色の櫛と朱染めの紐。
二つを手に埃を払って振り返れば、今度こそ厭きてしまったのか、それとも空腹のためか、少しばかりご機嫌ななめの大王が、ふくれっ面で長い足をぶらぶらさせていた。
「はいはい、お待たせしました。ちょっと後ろ向いてもらえます?」
苦笑して、彼の好き放題に寝癖の跳ねた頭をくしゃくしゃと撫でる。
ぴくっと肩を竦めた大王は、けれど大人しく言うことを聞いてくれた。
寝台の上にぺたんと座り込み、徒にシーツを足で蹴って、いつもと変わらない、でもいつもよりもずっと頼りなげで、折れそうな首を俯けて。
ちらちらと不安そうな、それでいて興味津々の様子でこちらを伺ってくる。
……一つ一つの仕草が妙に愛らしい。
これで体まで子供になってたりしたら……正直食わずにいる自信がない。
ギリギリの線で踏みとどまりながら、複雑に絡んでしまっている漆黒の、やや硬めの髪を、まずは手櫛で解しにかかった。
「あーあー…一体どんな寝方したらこんなことになるんです?」
笑い半分、あきれ半分で問う。
大王は首の座らない子供のように、僕が解かす手の動きにつられて、かくんかくんと俯いたり仰向けになったりを繰り返して……しまった。
「!、あぁぁごめんなさい、ついうっかり…痛かったですか…?」
慌ててぱっと手を離す。すると、弱々しく頭を抱える両手。
その様子に、痛かったよなぁ…と反省する。
僕たち鬼の平常時から長く鋭く伸びた爪は、どう深爪しようとものの数分で元の形状に戻ってしまう。
とにかくこれで傷付けることのないようにと、そればかりに気を取られてしまっていた。
…純粋な力比べだったら、大王より僕の方が何倍も勝っている。
そりゃあ手加減もなしにがしがしやられたら、かっくんかっくんともなろうかというものだ。
「ぅ……」
小さく呻く大王。まずい、また泣かせてしまうのか。
そう思って緊張するも、彼はゆるゆると頭を振っただけで、またすぐに元の姿勢に戻ってくれた。
「す…みません…今度は気をつけますね」
安堵とともに冷や汗を軽く拭って、後ろからちょっとだけ抱きしめた。
ぱっと振り返る目は驚いているけれど、同時に相も変わらず青白い頬にはうっすらと赤みが刺している。
回した腕でぽんぽんと撫でてから、再び、今度は慎重に、先程までよりは幾分落ち着いた髪に触れた。
「大王、下の方で結わえます?それともポニーテール?」
力を入れすぎないように、そして根気よく髪を解かしながら、だいぶ櫛が通るようになったのを見計らって声をかけてみる。
…ポニーテールには少々長さが足りないかな。
片手に緩く一房束ね、大王を覗き込む。
「………?」
あ、うん。そうか。わからないか。
「はは、ですよね。わからないですよね。…うーん、どうしましょっかねぇ…」
握った一房をああでもないこうでもないと弄ってしばらく悩む。
結局、上の方の髪をすくって、緩く束ねてやることにした。
「よい、しょ…と。…うん、まぁまぁ、かな?」
先程の折り鶴といい、別段器用なわけでもないくせに、はまると気の済むまで熱中してしまうのは、僕の良いのか悪いのかわからない癖だ。
後ろ頭のやや高めの位置で、控え目に結わえた髪。
長めの紅い紐を、両端が同じ長さになるように慎重に慎重に微調整。
「……はい、できましたよ。大王。自分で言うのもなんですが、我ながら結構な自信作です」
両肩に手を乗せて言ってやれば、きょとんとしてきょろきょろ辺りを見回し始めた。
動きに合わせてゆらゆらと紅が舞う。
「あ……ご覧になります?ええと鏡、鏡……」
そう言えばこの部屋には鏡がない。手鏡か何かでもなかったかな?と大王と一緒に僕もきょろきょろ。
と、あるものが視界に入った。
―――変身コンパクト。
寝台脇の卓上に、無造作に置かれたままになっている。
大方通常時の大王が、よからぬ遊びをしようとしていたのだろう。
……あまり触れたくはない。
恐らくは大王でなきゃこの不思議な効果を発動させられないのだろうし、どうやったら機能するのかも分からない。
そもそも、このコンパクトは万年調子が悪い。
調子の悪さにかこつけて、何度質の悪い悪戯を仕掛けられたことやら…。
とにかく、いい印象はほとんどない。
かと言って僕が自室に手鏡を持っているかと言えば、そういうわけでもない。
大王はといえば、まだしきりにきょろきょろと視線をめぐらせ、両手を頭に回してそわそわと落ち着かない。
さて、どうしたものか…。
などと視線をコンパクトに注いだまましばらく逡巡していると、大王の動きが止まった。
ちょっ…と、嫌な予感。
止まった大王の視線をたどれば、案の定、件のコンパクトに注がれていた。
興味津津、右手を寝台につき、乗り出すようにして左手を伸ばしている。
――誤作動でもおこったらどうしよう…。
コンパクト=危険物とみなしている僕としては、今の純粋無垢な大王の身に何かが起きたらと思うと居ても立っても居られない。
が、せっかく興味をもっているものを無下に取り上げてしまうわけにもいかない。
どうしよう、どうしよう。
おろおろおろおろ、うろたえながらもとりあえずは身を乗り出した大王がうっかり床に落ちてしまわないよう、腰のあたりに腕を回して支えてみた。
その間にも大王の左手指先はコンパクトにタッチ。
あああああ……。
かつっと爪先をあてて、そろそろと手繰り寄せて手中へ。
僕という名の安全ベルトの中、ぽすんっ、と座りなおした大王は、コンパクトを両手に持ってためつすがめつ眺めている。
しばらくくるくる回して遊んでいたが、中央の引っかかりに気付いたのか、ぱかっといとも容易くオープンしてしまった。
ひ、ひいいいい……。
両手に滲む汗を開閉させることでなんとかしようと、意味のない動きを繰り返す。
ど、どうしよう、何かあったら…ああ、やっぱり泣かしてでも取り上げた方が…。
……と、しばらく考えていたが………何も起こらない。
だ、大丈夫なのか……?
恐る恐る、僕もコンパクトを覗き込む。
……異常はない。
ほっと一息、ならば異常のないうちにさっさと後頭部を見せてしまおう。
「大王、そのコンパクト、貸してくれますか?」
それ、と指さしながら、お願いするように言ってみる。
と、両手でコンパクトを握りしめ、その端っこをかじりながらしばし逡巡していた大王は、それでもおずおずとこちらに手渡してくれた。
よし、このまま後でどこかに厳重に隠しておこう、と内心密かに近いつつ、「ほら」とコンパクトを(おそるおそる)全開にして映し出してやる。
いかんせん鏡面積が小さすぎて、なかなか上手く映し出すことができない。
それでもなんとか紅い紐と、それで可愛らしくちょこんと結わえられた髪の一房を示してやれば、大王はひどく満足した様子だった。
ぱぁ、とそれこそ花が咲いたという表現正しいほどの笑顔に、こちらの表情筋も再び崩壊した。
「…気に入ってもらえました?ん?……そうですか。じゃあ明日から毎日、結んであげますからね」
聞いてみると、笑顔のままこくこくと首を縦に振ってくれた。嬉しいったらない。
そうかそうか、前回も、というか早くから結んであげてれば良かったなぁ。
コンパクトを手にうんうんとうなずいていると、今度はあっさりとまたあのうさぎのぬいぐるみに興味が移ってしまったらしく、両手で抱えては嬉しそうに頬ずりしている。
「……見て、うさぎさん、かわいい?」
……小さくぽそぽそと語りかけている。
舌っ足らずのテノール。…まだ僕の方で少しばかり違和感が拭えないが、そんなことは問題にならないくらい愛おしかった。
これ幸いにとコンパクトをそっとポケットに仕舞い込み、しばらくうさぎと戯れる後ろ姿を眺めていた。
――さて、そろそろご飯にしようかな。
大王の好きなもの、カレーやらハンバーグやら、普段から子供っぽいものばっかり要求してくるもんだから、こういうときだけは献立に困らなくて都合がいい。
「大王?かわいく結べたことですし、そろそろご飯にしましょうか?なんでも好きなもの、言って下さいね」
大王の抱きしめたうさぎのみみをぴょこぴょこ動かしながら話し掛けると、満面の笑みでひとつ、頷いた。
続.
テンポ悪男とはまさに私のことで御座います。
すいません、好き勝手やってすいませんww
そうそう、鏡の件、退行おこしてるときに大王が自身の姿目にしたら、どんなリアクションとるんだろうなぁと思って書いてました。
……割と無頓着そうだなぁ、と。中身にそぐわない見た目に困惑するかなぁとも思いつつ、多分きっとそんなこと考える脳のスペースないに違いない(ちょ)。